コミュニケーションについて

コミュニケーション

communication

「コミュニケーションを取れ」

この言葉は、ホッケーの試合中や練習中によく聞く言葉です。

スポーツに限らず、人間生活のあらゆる場面でコミュニケーションというのは大事なこと。

人間は一人では生きていけない社会的な生き物ですし、人やモノ、情報が国境を超えて移動する現代においてはその重要性はさらに高まっていると言えるかもしれません。

今回は、この言葉をホッケーシーンで使う上で、こうして考えてみるのはどうだろうか、という個人的な考えをすこしまとめてみたいと思い、書いてみます。

意味

コミュニケーションの意味を「国語辞典で」引いてみました。

人間が互いに意思感情思考を伝達し合うこと。言語文字その他視覚聴覚に訴える身振り表情声などの手段によって行う。(スーパー大辞林より)

簡潔に書かれていますが、この短い文章の中にいくつか大事なポイントがあるように思います。

自分がこれまでホッケー人生を送ってきた経験では、指導者やチームメートがコミュニケーションという言葉を使ったときは、「声による聴覚的なコミュニケーション」を意味して使われていることが非常に多いように思います。

「コミュニケーションを取れ」という指導があったときは、よくそれに続けて「とにかく喋れ」「とにかく指示を出せ」というような言葉を耳にします。

個人的に、それはそれで、とても大事なことだ考えています。

たとえば自分たちが守備をするとき。

基本的に、どんなプレスをかけるか、指示役の選手がまず声で指示を出します。

選手それぞれがどこにポジショニングを取るか。それを調整する指示も声で出されます。

この声がなかったら、チームで同じ意図を持ってプレスをかけることはとても難しくなることは想像できるでしょう。

このとき、声の指示においては主に下記の要素が重要になってくると考えます。

・指示の内容
・指示のタイミング
・指示するときの声の大きさ

このあたりはトライ&エラーを繰り返して、感性を磨いていくことが大切だと考えます。

言いやすくて、伝わりやすくて、その内容がイメージしやすい言葉を選ぶこと、を心がけたいものです。

実例として、パスが欲しい角度を指示するときに「きゅうじゅう(90度)」「平行」といった言葉はよく使いますね。

日本ホッケー界特有の言葉の使い方だと思うのですが、両サイドのウィングがエンドライン際をドリブル突破していくことを「えぐる」と表現したりもします。

この例のようにチーム内で独自の言葉を作り上げて、一言で意志疎通できるようにプログラミングしておくことも有効かもしれません。

視覚的なコミュニケーション

これまでは言葉を使って、声を出して、聴覚的なコミュニケーションを取ることについて書いてきましたが、ここから視覚的なコミュニケーションについて書いてみたいと思います。

今回はここを取り上げてみたかったというのがあります。

オリンピックのホッケー競技の映像なんかを観たりしていると、うまい選手、というのはよく見ているな、と感じるシーンがあります。

テンポの速いパス回しをするためにはダイレクトパスやツータッチパス(トラップしてすぐにパスを出すプレー)が有効だと思うのですが、それが高いレベルでできているチームというのは、選手それぞれがパスを受ける前に首を振って周りの状況を何度も確認している姿が目につきます。

個人名を挙げるとすると、たとえばドイツ代表のハウケ選手は試合中、よく首を振っている姿を目にします。

サッカー選手でも上手な選手、というか判断が素早くて的確な選手、たとえばガンバ大阪の遠藤選手はそういうイメージが強いですね。

個人的な経験では、昨年引退した小野さんや川上啓さんはともにMFですが、お二人ともパスを受ける前にFWの動きをチェックしてくれていました。

言葉を交わさずとも目が合えば、「これはスループレーだな」と感じ取ることができ、

たとえば実際に小野さんや啓さんがパスを受けるフリをしてボールをスルーし、その抜けてきたパスを自分が受けて、その後オーバーラップしてきた小野さんや啓さんにパスを当てて崩す、というプレーは何度も経験しました。

ここで具体的にあげたスループレーを視覚的なコミュニケーションのみを使って行った場合と聴覚的なコミュニケーションを使って行った場合を比べると、いくつか違いがあると思うのですが、

視覚的なコミュニケーションのみであれば

・声に出していないから相手選手にバレない
・目を合わせるだけなのでコミュニケーションに割く時間は一瞬で済む
(・呼吸があったときの喜びが大きい)

3つ目はおまけとして書きましたが、実際に目を合わせるだけで意思疎通がうまくいき、その結果、相手を崩せたときというのはなんだかうれしいものです。

ここではアイコンタクトを紹介しましたが、それ以外にも、シグナル(ボディランゲージ)というのも視覚的なコミュニケーションとして挙げられます。

たとえば相手DFの厳しいマークをかいくぐってパスを受けるために、走りながらリードしている方向とは逆の方向に指を指してパスを受ける、といったものです。

このプレーを実現するにはパスの出し手がパスの受け手の動き、シグナルを見る能力が必要です。

パスを出すためにボールばかり見ている選手はこのシグナルを受け取ることができず、コミュニケーションとして成立しません。

粥さんはパスを出すときにこちらの動きをよく見てくれているので、このプレーを実現しやすいです。

山下はよく見てくれているのはもちろんですが、うるさいくらいに聴覚的なコミュニケーションも取ってきてくれます。(笑) 

どう向上させるか

この視覚的なコミュニケーション能力をどう向上させるか。すこし考えてみたいとおもいます。

まずは前提として、視覚的なコミュニケーションという概念の存在を理解して、しっかりと頭に入れること。

そして、それを有効に使えばパフォーマンスの向上につながる可能性があること。

こういう意識を持ってトレーニングしていけば、この能力は高めることができるのではないでしょうか。

個人的には大学時代、ロナウジーニョのノールックパスについて科学的に考察した文章を見てから「視覚的なもの」について意識するようになりました。

(詳細は忘れてしまいましたが、簡潔にいうと「人間の脳は予測する能力があるから、それを逆手に取ったノールックパスが有効」という内容だった気がします)

もともと、日本はハイコンテクスト文化と言われているように、文脈を読んで、空気を読んで行動するのが得意な民族なので、繊細なコミュニケーションを取る素質はあるように思います。

(スポーツシーンにおいては、この空気を読むという国民性が、ときには自分の意見を主張することを過度に我慢することにつながり、結果的にコミュニケーションを取ろうとしない、という事態に陥ってしまっている場面も目にしますが・・・。)

ホッケーのプレー中にどのような視覚的なコミュニケーションを取ることが有効か、という点についてそれまで意識したことがなかったという選手がいたら、

まず、その意識を変ること。

それを継続して行っていけばプレーの幅はけっこう広がるのではないか、と考えています。

意思の疎通、意思の伝達

ここまで、聴覚的なコミュニケーションと視覚的なコミュニケーションについて、ホッケーシーンの実例を交えながら書いてきましたが、もうすこし補足してまとめたいと思います。

これは今後の自分に言い聞かせ続けていきたいことであり、高校生・大学生時代の過去の自分に伝えたいメッセージでもあるのですが、

言葉の意味をしっかりと考えていこう、ということです。

今回取り上げたコミュニケーションという言葉は頻繁に使われる言葉ではあるのですが、今回言及したようにホッケーシーンにおけるその言葉の意味がかなり限定的になってしまっていて(それはそれで意味のあることとは思うのですが)、

もうちょっと原点に立ち返ってみて、その言葉の意味そのものを考え直してみることで、もっと上手に、コミュニケーションという単語を使っていけるのではないか、という風に感じています。

今回、取り上げたのは声であったり、アイコンタクトであったり、ジェスチャーであったりしたわけですが、こうやって文章で伝えることや、あるいは絵やイメージを使って伝えることもコミュニケーションのひとつです。

さすがにホッケーの試合中にピッチ上で絵を書いている暇はありませんが(笑)、試合後のメーティングにおいて作戦ボードを使って図を描いてお互いの意思を伝え合うことも有効です。

ビデオを観て、チームメートのプレーのクセ、相手チームの特徴を把握しておくことなども、のちのちコミュニケーションを円滑に進めていく上で役立つでしょう。

お互いの意思感情思考を伝え合うこと。

伝達、という漢字にあるように、

伝えたいことが相手に達すること。

相手が伝えたいことが自分に達するようにすること。

言語、文字、身振り、表情、声。

どの手段を使って伝達し合うか。

このあたりはホッケーシーンだけではなくて、日々の生活でも非常に重要な能力だと思います。

自分自身、コミュニケーションの取り方に関してはいろいろと反省する点があるのですが、自分の意思、考えといったものを健全な形で伝えていくこと、そして意思や考えを伝えてもらえるような態度で接すること。

これらを意識していきたいものです。

ホッケーをしていて頭に血が上ってしまったときに「健全な形で」という部分がなかなか難しくなりますね。

スポーツにはいい面もあれば、そうとは言えない面もあるとは思うのですが、

お互いの考え・価値観の違いを受け入れあってチームとして戦う。

こういう経験は、ホッケーというスポーツが与えてくれている意味の大きい経験だと思っています。

さて、最後になりますが、全日本選手権開幕まで一ヶ月を切っております。

あらためてホッケーシーンにおけるコミュニケーションの取り方を見つめ直すこと。

これらを含めて、いい準備を重ねていきます。

それではまた。

藤本一平

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